その弐 初めての検定は新しい事が満載なのです。

 私は今まで滑りを他人に教わったというのが、ボードを始めたばかりの頃に上司に教わった(放置プレイ)、社員旅行の無料レッスンで1クラス20人以上というレッスンを受けた(殆ど手放し)、という程度です。そんなわけでまともにレッスン等を受けたことがないと言っても過言でない私は、バッジテストの事前講習が人生初のまともなレッスンみたいなものでした。それまでは正直「滑れればいいじゃん」と思っていたのですが、知人に「ヘタでも型が出来ている人が受かる」と言われた時はショック大きかったですね。未だに理不尽な気もしますが、郷に入っては郷に従え、型通りの滑りをやることにします。まあ以前にもバッジテスト経験者に「型が大事」とある程度事前に聞いていましたので、バッジテストを受けると決めた時から何度か両手を挙げたカービングをしてきましたし、もともと順応性の高い私は、まあそのスタイルでもそこそこ滑れましたけどね。

 さて時は飛ばして受験当日です。10時までにスクールに申し込みと調べておいたので、到着して着替えて、さくっとスクールに向かいます。手続きはアッサリで、いやにたぬき焼けした爽やかなお兄さんが事細かに説明してくれました。その日の2級の事前講習は私を含め3人です。受験が初めてなので、それが多いのか少ないのかすらよく判りません。しかしレッスンとして考えたら同じ2級受験者という同じくらいのレベルの3人でレッスンというのは少人数でいい感じではないかと思っていました。「もう身体は温まっていますよね?」と言われて「イイエ」とも言えず、さくっとリフトで上ります。まあ暖かかったので全然余裕でしたけど。ここで軽く説明をしておきますと、JSBAの2級バッジテストというのは3種目をこなし、その平均点で合否が決まります。ロングターン、ショートターン、総合滑走です。

 まずはロングターンを見てもらいます。ロングターンとはその名の通り、大回りのターンで、ゲレンデを端から端まで使って大きいカービングをします。ターンはプレターン(スタートの直滑降から斜滑降に移行するためのターン)を除いて、4〜5回という指定があります。まあ1級は4回という指定があるので、4回で収めるのが良いでしょう。また2級以上では「立ち上がり指定」というものがあり、ちゃんと上下動をして板に加重、抜重してますよーと検定員にアピールしなければなりません。とりあえず私も検定を意識した滑りをします。ざっくりダメだしの山盛りです。「おいおいマジでやばいよ」と真剣に思い悩みます。しかし同じく事前講習を受けていた2人もボロボロに言われているのを見て、「ああ、こうやって細かく色々言う(教えてくれる)イントラなんだな」と思い直します。しかし注意された通りに色々とやってみるとどんどんダメになります。当たり前ですね。10年もやってきたものをその場で言われて変えろと言われたって簡単に変わるわけはないのです。まあそれでも2級だし大丈夫だろうとタカをくくる自分と、おいおいこのままじゃ絶対無理だよとびびる自分が葛藤していました。

 次にショートターンを見てもらいました。ショートターンもその名の通り、小回りのターンです。回数に制限はありません。また2級には「立ち上がり指定」はありませんので板を回して弧が描ければ良いのですが、1級にはこのショートターンにも「立ち上がり指定」があるため、ここでもどうせなら1級を意識して加重抜重を入れるのがベストなようです。とりあえず調子に乗ってひょいひょい滑ります。イントラに爽やかに「暴走です」と言われます。ほえ?暴走ってのは自分で制御できないスピードじゃないんですか?と思ったのですが、検定では本人がどのスピードを制御出来るか出来ないかなんて検定員には判りはしないので、ちょっとでも過剰スピードだなと思ったら全て暴走行為と看做すんだそうです。もちろん暴走行為は減点対象だと脅されます。うーん、検定ってのはホンマめんどい。

 最後に総合滑走を見てもらいます。その名の通り、総合的に色々と行う、言わば普段ゲレンデで滑っている滑りです。もちろんカービングだけじゃなくドリフトターンもOKで、それどころか可能な人は180°を入れようがフェイキーで滑ろうが全然OKなんですね。しかしコケちゃだめです。条件としては2種目以上の組み合わせがあることだけです。私の演技の組み立てとしては単純にショート−ロングと考えていたのですが、「ウチは長いですよ。ここからあそこまで」と言われた距離にびっくりです。ほんとにすんごい長いんです。仮にロングだけで滑ったとしたら10回転以上出来そうな距離です。特に長さに規定というものはないらしく検定を行うゲレンデ(スクール)によってこの距離は任意なんだそうです。明らかにこれはショート−ロングだけで繋ぐのは難しいと思い、急遽ショート−ロング−ショートに切り替えます。かなり雪面が荒れていましたが、「総合滑走はショートやロングと違い、ノビノビ滑ることが加点対象ですよ」のようなことを言われました。おおそっかと思い、本当にノビノビ滑ります。明らかにさっきのショートの暴走よりも過剰スピードです。しかし「それでいいですよ。アグレッシブに攻める体勢がいいんです」とあまりダメだしもありません。変に4回転とか決まっているよりやっぱりこの方が気楽でいいですよね。

 時間が余ったようなので、最後の最後に苦手なものを見てあげると言われ、やっぱりダメ出しの多かったロングを見てもらうことにします。最初とあんまり変わっていないような気がしますが、それでほぼOKだとか。これでええんかい!と心の中でツッコミ入れます。ほんとよく判らないです。

 さてさて、そんなこんなで全てを理解する暇もなく本番です。が!「非常事態が発生して、検定を30分遅らせて欲しい」とのスクールからの連絡です。どうやら検定とは検定員が2名立ち会わなくてはならないらしく、その検定員が1人寝坊をして未だ到着していない模様です。他に代わりの人はいないものでしょうか。結構いい加減ですねJSBA(というかこのスクールが、ですか)。さて一時はどうなることかと思いましたが無事30分後に検定員が到着して、本番開始です。このスクールでは先に1級が滑ってから、2級の2番目に私の番です。まずはロングターン。さほど緊張してたわけではないのですが、プレターンを含む4ターンを大きくやりすぎてしまってオーバーランしそうです。あくまでゴールポイント内できっちり停止しなければならないため、意外とゲレンデではやらない「坂道停止」を練習しておくことをオススメします。私は仕方なく最後の1ターンがゴールに合わせる為にかなりドリフト気味になりました。しかし然程の大きな失敗もなく終了です。

 次はショートターンです。いやぁ、ここでやってしまったんです。暴走です。ショートターンというのは綺麗にエッジに乗り過ぎると、じゃんじゃんスピードが上がりますよね。事前講習の時にも予めイントラに「過剰なスピードは暴走行為と看做して減点対象になりますよ」と言われていたので、押さえに押さえていたつもりなのです。しかし雪面が柔らかいので板が立つんですよ、僅かなエッジで。普段通りの滑りでひょいひょいカービングを入れてしまったのでさぁ大変です。気付いた時には十分過ぎるスピードです。慌てて後半の数ターンは思いっきり踏み込んで多少弧を大きくしてさらにドリフト気味でスピードを押さえましたが、やっぱり減点されただろうなぁとガックリです。

 しかしのんびりガックリしている暇もなく最後は総合滑走です。ショートターンで減点されただろう事を見越して、アグレッシブに果敢に行こうと思いました。今考えたらこれがいけなかったのかもしれませんね。先程言った通り、私の構成はショート−ロング−ショートだったのですが、総合滑走に使うバーンはかなりの急斜面からのスタートだったんです。最初のショートでいきなり暴走です。しかしめげずに大きくロングに移行しようとしたその時です。抜重をした瞬間にコース端の日陰に出来ていたコブに乗り上げてしまい、板が跳ねてしまったんです。うわっと思った時にはもう遅かったです。普段なら板を横にしてザザザーッと止まりますが、検定ですので止まるわけにはいかず無理やり身体を開いてエッジに乗ろうとしたものですから、エッジが抜けてシリモチをついてしまいました。はぁ。その瞬間もう目の前真っ暗です。何事もなかったように大きくロングターンをしてからショートで繋げてゴールしましたが、もうだめだろうという事ははっきりしていました。何故って、やっぱり事前講習の段階でイントラに「転んだら一発終了ですよ」と言われていたからです。その日は朝から一回も転ばなかったのに、よりによって一発勝負の検定で転ぶ所が私の本番の弱さなんでしょうか。

 まあ間違いなく落ちたとは認識していますが、総評を聞きたかったですし、出来具合も知りたかったので悶々と合格発表を待ちました。それを待つまでの滑りは、自分でもビックリするくらい生き生きしていましたね。さて、結果としてはロング71点、ショート70.5点、総合滑走68点、平均69.5点の0.5点足らずで見事不合格です。もし1級であればエアで点数を稼げる(本職ですから)ことは間違いなかったのですが、もうこればっかりは仕方がありません。

 点数の仕組みがイマイチよく判らないんですよ。満点が何点なのかよく判りません。しかし全ての人の全ての点数を見ても、67点が最低点で、最高点も71.5点です。JSBAのサイトを覗いて考えていたのは、各種目が100点中60点以上であり、平均点が70点以上ということで、悪いと50点、高いと90点とか出るものだと思っていましたので。しかしそういうものではなく、良くも悪くも無難というか最初は70点であり、そこから1点2点という単位で減点加点があるだけのようなんです。そんなだったら10点満点で5点以上、でも良い様な気がするのですが・・・。でもまあコケて-2点ということは、2点という点数がすごく大きなものであり、逆にロングで71点というのはものすごくよいものだということみたいですね。2級にしては、ということなのかもしれませんけど。

 総評を聞きましたが、やっぱりコケたことが減点です。それ以外は「何かみんなに同じことを言ってるんじゃないの?」という順当なありがたいお話を頂戴いたしました。そりゃそうですよね、考えてみれば。1級も含めて10人以上いる全ての人の滑りを事細かに覚えている訳ないのですから。しかし事前講習してくれたイントラに「次受ければ絶対大丈夫だからがんばって」と励まされましたが、やっぱり悲しかったですね。帰りの道中、ずーっとブルーでした。こう見えても意外とナーバスなんですよ私は。

 落ちたせいもありますが正直言ってものすごくつまらなかったです。そもそも滑りにあまり興味がないのですから当たり前なのですが、ワンメイクで成功したときのようなワクワク感や達成感は全然ないんですよ。何か軍隊か何かで強制されているような気持ちです。そのつまらない事のために数万を費やして、得るものは何があるんだろうと自問自答です。もう自分の実力が判ったから、これからはあまり大きなことは言わずに飛びに専念しようかと思い始めていました。しかしここで鈴木さん(もう一人の私、仮称)が頭の中で大騒ぎします。「2級すら受からないんじゃ大したことないなオマエは。口だけか」この鈴木さん(仮称)のセリフが佐藤さん(さらにもう一人の私、仮称)をアツくさせます。「うるさいよ君、たまたま1発勝負で失敗しただけです。乗りかかった船ですから、受かるまでやってあげますよ」普段冷静な佐藤さん(仮称)がここまで言うのは驚きで、ツェットはビックリしたと同時に感化されました。私の心の中では【つまらない < 悔しい】という図式が完成されつつありました。つまらなくてもいいんです。自分の意地のために、「滑り?そんなんもう飽きちゃったよ」と言い訳がましくなく胸を張って言えるようになるために、リトライする事を心に決めたのです。私は負けず嫌いの意地っ張りなのです。

つづく

Google
 
Web www.fatal.jp